今回から始まるベジフル先取り紀行では、6月に旬を迎えるきゅうりを紹介したい。
我々の食卓の中でも、かなりポピュラーな野菜の1つだが、そのルーツはメソポタミア文明にまで遡るほど古く、日本でも平安時代にはその名が文献に残されている。
長く食べられてきた野菜の一つではあるが、江戸時代になると、水戸黄門でおなじみの徳川光圀が「苦くてまずい。植えなくていいし、食べなくていい」ときゅうりを酷評している。
また、現在でいう食育の先駆けともなった『養生訓』を著した貝原益軒からも、「品のない味。まずい。苦い」と散々な評価であった。
この頃は、苦味が強い黄色くなるまで熟したきゅうりを食べていたようで、現在のように緑色のきゅうりが流通するようになったのは、江戸時代末期のこと。
その後は熟す前の緑色のきゅうりを食べることが一般的になり、人気の野菜となった。

きゅうりと牛乳を同じ量で比較すると、実はきゅうりの方が水分を多く含んでいるのだ。何と、重量のたった5%程度の成分が、きゅうりを固体として成立させているのである。
私の好きなきゅうりの食べ方は、水で洗って、そのままガブリ。至ってシンプルだ。きゅうりは近所のスーパーなどで簡単に入手できる上に、味にクセがないため、ドレッシングや調味による味の変化を楽しめる。ほんの少し塩を振るだけでも十分うまい。生で食べる機会が多いが、炒め物にすることもでき、野菜炒めに加えるとなかなか特徴的な味わいになる。水分を飛ばしすぎるときゅうりのコリッとした食感が失われてしまうので、最後の具材として入れて、サッと火を加える程度がよいだろう。

河童は怪力の持ち主だが、頭の皿から水がなくなると力が出なくなるという。だが、水分を失うと力が入らなくなってしまうのは、人間でも同様だ。きゅうりを食べて水分をしっかりと補給し、夏の暑さが本格化する前に体調をしっかりと整えておきたい。