家庭で起きた問題は第三者が外から見ただけではわかりにくいものです。そしてそれらの中でも、家庭内暴力は家族の心身に大きなダメージを与える深刻な問題となっています。
今回はチャイルドカウンセラーで学んだ内容をもとに、父親から青少年期の子どもに対して暴力がふるわれているケースについて取り上げます。
家庭内暴力の定義とその原因について考える
チャイルドカウンセラーのテキストによると、家庭内暴力とは家族が他の家族に対して暴力を振るうこととされています。暴力を振るう本人よりも弱い立場の家族が標的になりやすく、基本的に第三者からの干渉を受けにくい家庭内の出来事であるため暴力が次第にエスカレートしやすいという特徴があるそうです。
父親から子どもに暴力が振るわれるケースでは、父親自身も子ども時代に自身の親から暴力を受けていることが多いといいます。そのため「親が子どもを厳しくしつけるのは当然」「言っても聞かないなら殴るしかない」などと暴力を肯定的に捉えてしまっている人もいます。
また、自分が暴力を受けて育ったために、暴力は止めたくてもそれ以外の方法がわからないという場合もあるようです。そしてしつけと称した暴力の裏には子どもに手を上げることが日頃のストレス発散のはけ口になっていたり、弱い存在をねじ伏せることで支配欲を満足させたりといった心理が潜んでいると考えられます。
また、子どもが自分の意見を持ったり、父親の思うような成果を上げなかったりしたときに強い怒りを覚える場合には、父親が子どもを自分とは別の人格であるという事実をきちんと認識できていない可能性もあると思います。
家庭内暴力によって子どもが受ける影響とは
テキストによると家庭内暴力を受け続けた子どもは、自尊心や自己決定能力が低下しているそうです。
子どもは多くの場合、人生で最初に密接に触れ合う他者である保護者との関わりのなかで人との関わり方を学んでいきます。わが子の成長の過程を見ていても私たち夫婦にそっくりの口ぶりやしぐさをするなど、まずは両親の真似から人とのコミュニケーション方法を学んでいるのだと感じることが多々あります。
そして同時に保護者から無条件に愛されることで「自分は大切な存在なのだ」と感じて自己肯定感を持つようになるものだと思います。日常的に親から暴力を振るわれ、相手の意に沿わない選択をしたら責められ殴られるような生活をしていたら子どもの人格形成や、その後の人間関係にどんな影響が出るでしょうか。
暴力を受ける可能性のある環境を一刻も早く変え、子どもが安心できる場所で少しでも早く心のケアを始める必要があるとテキストを読んで感じます。
深刻な家庭内暴力は専門機関に相談する
テキストによると家庭内暴力に関するチャイルドカウンセリングを行う際に、特に注意すべき点があるといいます。それは特に暴力行為が続く可能性がある場合には、クライエントの命を守るために家庭内暴力に関する相談を受け付けている福祉の専門機関や警察に相談する必要があることを伝えるということです。
今回は子どもが腕力の強い父親からの暴力を受けており、母親が止めても父親が聞き入れないというケースを想定していますからカウンセラーから母親に対して上記のような説明をきちんと行うべきでしょう。
本来チャイルドカウンセラーにはカウンセリングで知り得たいかなる情報も漏洩してはならないという守秘義務があります。
しかし、クライエントである母親も家庭内暴力の被害を受けていて自己決定能力が落ちている状態にあり、なおかつ子どもや母親に命の危険がある場合には守秘義務よりも通告義務(福祉機関や警察に通報する義務)が優先されるのだそうです。
まずは被害者の安全を確保してから家族全員のケアを行う
家庭内暴力のカウンセリングについての学習で学んだことは、とにかく家庭内で被害者となっている人の安全をいち早く確保するべきだということです。
他者から干渉されない閉じた空間で支配関係ができ暴力が振るわれるようになると、どんどんエスカレートしていく可能性があります。暴力行為が長引けば長引くほど被害者は心身に大きな傷を受けてしまうので、「しつけだから」「たいしたことない」と軽視せず早めに対策を考えるのが大切だと感じました。
家庭内暴力について考えたときに少し「こわいな」と思ったのが、暴力を受けることを耐え続けていると自己決定能力が鈍って命の危険があるにも関わらず専門機関や警察に相談することができなくなるケースがあるということです。
健全な精神状態では少し考えられないことですが、この場合カウンセラーが通告義務を果たすことがクライエントの命を守ることにつながるのですね。そして家庭内暴力の直接の加害者と被害者以外の家族全員にも心のケアなどの支援が必要であるということもわかりました。
家庭内暴力によって生じたおそれや不安、誤った認識などを取り除いて自分と相手を尊重する人間関係を築けるよう支援していくことが家族全体の幸せにつながるのだと思います。
人生ではいつ何時どんな出来事が起こるかわかりません。もしも将来的に自分が家庭内暴力を経験したら?または大切な人が家庭内暴力に悩んでいたら?今回学んだことをもとに早め早めに自ら行動したり、アドバイスしたりできるようにしたいと思った事例でした。