子どもに関する家庭内の困りごとで上位にランクインする兄弟ゲンカ。どの子もかわいいわが子なのに、兄弟同士の仲が険悪だと親としてはとても悲しいですね。
今回は家族療法カウンセラー講座で学習した内容をもとに、兄弟ケンカへの対応について考えてみます。
兄弟ケンカの裏に潜む子どもの思い
子どものカウンセリングの現場では、兄弟のケンカに関する相談がとても多いのだそうです。今回は「下の子どもが上の子どもを煽ってケンカをしかけながらも、形勢が不利になると親に助けを求めるケース」に対するカウンセリング方法について学んだことをおさらいしていきたいと思います。
子どものケンカには、その裏に子どもの思いや意図が隠されているといいます。
今回の「ケンカをしかける下の子ども」には、上の子どもに何とかしてかまって欲しい、もしくはケンカを生じさせて親の注意を引きたい、自分が起こしたケンカでも最終的には親が自分をかばってくれるということを確認したいなどの意図があると考えられます。
当然ケンカをふっかけられた兄や姉は下の子よりも言葉が達者で力も強いので下の子は負かされることになりますが、そこで親が子ども同士のケンカに介入して下の子をかばうことで問題がいっそう深刻化するのだそうです。
たしかに、体も小さく腕力もない下の子が上の子に叩かれたりキツイ罵倒の言葉を受けたりして泣いていると心が痛みますが、そこで「年上なんだからあなたが我慢しなさい!」と親が押さえつけてしまうと上の子には「もともとは弟(妹)が悪いのに」という思いが残ります。
そのストレスは下の子へのネガティブな感情となって兄弟ゲンカがますます激化していくという悪循環に陥っていく可能性があるのだそうです。
とりあえずケンカをやめさせるのではなく、ケンカのもととなっている子どもの意図を見抜く
兄弟ゲンカで親が下の子の肩ばかり持つことは上の子に親への反発心と下の子への恨みを抱かせ、下の子には泣けば思い通りになるという誤った認識を植えつけます。
今回の兄弟ゲンカでは下の子が「上の子と遊びたい」「親にかまってほしい」などの望みを「ケンカをふっかける」という誤ったアプローチ方法で叶えようとしているところに問題があります。そこを置き去りにしてとりあえずケンカをおさめるために上の子に我慢を強いるのは逆効果もいいところなのですね。
家族療法のカウンセリングでは相談に訪れたクライエントである親に対してまずは子どもたちの普段の様子を詳しく話してもらい、その各場面で親がどのように感じていたか話してもらうことで兄弟ゲンカが起きるプロセスや親がこの問題に対してどんなスタンスを取っているかなどの情報収集をしていきます。
そして、クライエントとの会話から兄弟ケンカに隠されている子どもの意図を見つけ出し、その解決法を一緒に考えていくそうです。
親からの視点のみだと「小さいのに上の子にいじめられてかわいそう」「いくらケンカをしかけられても年上なんだから」などと狭い視野でしか考えられなかったものが、カウンセラーの客観的な視点を交えることでケンカに隠された子どもの「本当の気持ちや望み」が見えてくるところが素晴らしいと感じました。
そのロールプレイでは兄弟ゲンカに悩む両親が登場しますが、冒頭では母親と父親はわが子のケンカに異なる見解を持っており、深く悩んでお互いに心が硬くなっている様子がよくわかります。
それがカウンセラーの聞き取りを受けてさまざまな会話をするうちに兄弟ゲンカの真の問題点は何なのか次第に自覚し、自分たちで解決策を模索していこうという前向きな姿勢に変わっていくのです。
もちろんこれはロールプレイなので現実はなかなかこのようには進まないかもしれませんが、カウンセラーが会話の中で決してクライエントの気持ちを否定せず全て受け入れながら情報収集を行い、クライエントが自分たちで解決方法を探せるよう手助けしていく姿はとても勉強になりました。
特に私が感動したのは、この映像教材の家族における兄弟ゲンカの原因は「妹の行動」にあるとわかったあとの流れです。
「発端は妹の行動にあったとしても、それが現在の問題に発展したのは家族全員の関わり方がひとつの要因となった結果である。誰かを悪者にするのではなくこの問題を家族みんなのものとして考え、お互いを尊重して問題を解決しようと協力することが大事である」というものです。
問題は誰が悪いかではなくてみんなが幸せになることなのですね。わが家は一人っ子ですが、子どもと親の関わりについて深く考えさせられる事例でした。